concept
この住宅に求められる性能は採光と通風を確保する事である。広い敷地ではあるが比較的密集した団地には、特有の制限がある。この土地環境での最大の制限は日照と近隣からの視線だった。
南側に建つマンションの影が敷地に伸びてくる条件の中で、いかにして建物内部へ自然に採光を取入れられるかを考えた。
何度も現地を確認し、この土地にできるマンションの影は冬季の1月下旬の14時にほぼ敷地と垂直になり、20分後に影は無くなる事がわかった。この事から推測し、この土地は午後からの日当たりは良いので午前中の日射をどう建物に取入れるかが大きな課題となった。
採光的に全く問題の無い夏季は暑い日差しが建物内に入り過ぎない様に軒の出を深くして日射を遮り、暑すぎる事のない夏の空間を創る。
この度の提案の最大のポイントは、北側のハイサイドライトから建物内に自然光を取入れ、建物内部全体を採光が透過する家にした事である。
空間と空間はランマ部分の硝子で繋がり明るさと広がりを生んでいる。リビングのハイサイドライトは開閉式である為、北側の一定で優しい光をリビングに届けるだけでなく、夏の暑い熱を外に排気してくれ、この家を機能させる最も重要な役目を果たす。
回遊性の高い動産計画は生活にゆとりを生みだしている。
空間のデザインは機能が伴って初めて評価に値すると考えている。可能な限りの要望を満たし、住まいが環境と調和し機能し始めた時、この住宅はこの土地に合った一品物の価値が出てくると思っている。
山口県下関市長府前八幡町 2013,11 竣工